なんてこった
その言葉がほしかった。
誰からというのでもなく。
旧約聖書、箴言(しんげん)19章22節
「人の望むものは、人の変わらぬ愛である」
結局、天国行った妻からも、さいごまでそれを聞くことはなかった。
もしかしたら妻はそれを言ったことがあったのかもしれない。
でも私の記憶の限り、それはない。
感謝とか励ましとかねぎらいの言葉。
「毎日よく頑張って~」
私は妻を愛していたし、「できる限りの」とまではいえなくても、できる範囲でしてきたつもり。言葉だけでなく。
妻が「あのときは感動した」と何度か私に言ったこと。オバサンになってからも。
まだ子がなく2人暮らし、新婚気分のころだったと思う。
妻は風邪で会社(銀行)を休み、寝込んでいた。
私は買い出しに行き、卓上コンロと鉄鍋に白菜ネギシイタケに肉や糸こんにゃくタマゴなど「鍋一式」を仕入れて帰り、妻にあたたかな鍋を用意したのだ。
*************
いろんなことがあった。
妻はやりたい放題、好きにしていた。
浪費もしてたし。猫飼うことになって「動物愛護センター」でもらってきた黒猫(♂)。しばらくしたら「もう一匹ほしい」と20万使ってスコティッシュ、モコ君(♀)。
ゲームもマンガも録画も。
スキーもドライブも。
私は妻が死ぬ2週間か一か月前か、言った。マジメに。
「ありがとう」と。夫婦げんかもあったけど良い妻として私と暮らしてくれることに感謝の言葉を。その数週間後に天国に行ってしまうとは知らずに。